ムーミンパパの「手帖」トーベ・ヤンソンとムーミンの世界(その1)
- 2008年10月 9日(木) 23:36 JST
- 投稿者: kawamoto(oidc)
著 者: 東 宏治 |
ISBN:4-7917-6312-2 |
発行所: 青土社 |
発行日:2006年12月30日 |
22 ポリフォニー、その他の手法について よりの抜粋
- 『彫刻家の娘』のなかで、友達のポユーと少女ヤンソンとが絨毯の模の上でする遊びは、ムーミントロールの太陽の影と光の部分の踏みわけ遊びに変わっている。これは、ヤンソンの頭のなかで、絨毯の模様と、地面の斑模様との間にメタファー関係が生まれたということではないか。以下に、その二つの文章を並べて引用してみよう。
- 「私はポユーに大きな絨毯の上の沢山の蛇から逃げる方法を教えた。蛇から逃げるには、絨毯の模様の明るい色彩の全部の上を、その明るい色の縁に沿って歩くようにしなくてはならない。その縁の隣にある暗い色のところを踏めば、その人は負けになる。絨毯の暗い模様のところには、とても言葉では説明できないほどの沢山の蛇が群がっていると想像しなければだめだ。誰も他の人が想像した蛇など恐くないのだから、蛇がそこにいるのだと、自分で想像しなければならない ・・・(あと省略)(『彫刻家の娘』26ページ)
- 「そんなわけで、ムーミントロールはモランのことは忘れてしまい、朝の太陽が投げかけている長い影の中を歩きながら、一つの遊びを始めました。まず太陽の照っているところだけを歩かなければいけないのです。影は海の底知れない深みです。もちろん泳げないと考えてのことですけれどね。(『ムーミンパパ海へ行く』31/33ページ)(P223)
こどももおとなも楽しめる文学であるムーミン物語。
フランス文学者 東宏治氏の「ムーミンパパの手帖」は、トーベ・ヤンソンの深い世界観を数多くの引用と明晰な分析力で読み解いています。
その中に、プレイフル・デザイン・スタジオ第1回ワークショップで参加者から得られた、こどもOSキーワード「Mineるーる」を補強する箇所がありました。
ヤンソンが現実の出来事をファンタジー化する方法として東氏が分類する手法は三つ。「(出来事の)単純化」、「(登場人物の)移しかえ」、「(イメージの)膨らまし」です。この三番目の方法を東氏は、一種のメタファー化の操作だと言っています。
日本語で言うと「見立て」でしょうか。こどもたちの見立て遊びがファンタジーと同根であり、それはもちろんデザインの創造にもつながっているということでしょう。
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