ファンタジーの文法 物語創作法入門 その1
- 2008年11月30日(日) 21:18 JST
- 投稿者: kawamoto(oidc)
原書名: LA GRAMMATICA DELLA FANTASIA〈Rodari, Gianni〉 |
著 者: ジャンニ・ロダーリ 訳 者:窪田 富男 |
ISBN: 4-480-02481-6 |
発行所: ちくま文庫 |
発行日:1991年9月25日 |
4 ファンタジーの二項式 よりの抜粋
- ヴィクトル・シクロフスキー※1は、トルストイの持っている《異化(ストラニアメント)》(ロシア語で《ostranenije》)の効果を記述しているが、トルストイは、粗末な寝椅子のことを語るのに、以前に一度も寝椅子を見たこともなく、それがどんなことに使えるのかまったく知らない人物の語り口を使っているという。
- 《ファンタジーの二項式》においては、ことばは日常の意味で取り上げられるものではなく、日常的に果たしていることばの鎖から解き放されるものである。ことばは、互いに《引き離され》、《流浪させられ》、まだ見たこともない異郷の空でぶつけ合わされるのである。こうすることによって、ひとつの物語を生み出すよりよい条件があたえられることになる。(P42)
ある対談でグラフィックデザイナーの原研哉が、プロダクトデザイナーの深澤直人氏がデザインした、換気扇のような形の...紐を引っ張るCDプレーヤー(無印良品)を指して次のように述べています。
一見すると、どこが面白いのかよくわかんないんだけど、後で「あ、なるほど〜」と気付くデザイン。
紐を引っ張るとファンが回るって、もう皆知ってるわけだから自然に引っ張っちゃう。
でも実際は風はこなくて、ふわ〜っと敏感になった皮膚に音楽がそよいでくるわけだから、最初の瞬間は不思議なメカニズムを感じてしまうわけです。
その辺が彼の意図なんですね。その瞬間に「あ、なるほどー」と思うわけでしょ。
深澤さんのデザインは最初は普通すぎてわからないんだけど、やっているうちに「なるほど」「ワォ」ってそれが後ろにくる。
これを「Later Wow」と言っている。最初よりもその方が忘れがたいものになる。「First Wow」よりも印象的なんだと。
これは僕が言っているコンマ以下の世界みたいなものだと思うんだけど、ものの見方や感じ方をちょっと変えてみるだけですごく印象に残る。
それを探していくのが新しいデザインの世界ではないかなと。
やっぱり鋭いプロダクトデザイナーですよね。狙ってるポイントが他のデザイナーとは全然違うんですよね。小数点を出してきてるわけですから・・・。
さて、これをこどもOS的に解釈すると、換気扇とCDプレーヤーを結びつける深澤氏のファンタジーと遊びゴコロ。そして、みんなが知っている換気扇の機能を《異化》する(いい意味で裏切る)好例と言えるのではないでしょうか。
※1 ヴィクトル・シクロフスキー『散文の理論』
著 者: ヴィクトル・シクロフスキー 訳 者:水野 忠夫 |
発行所: せりか書房 |
発行日:1971年1月 |
詩的言語への深い考察から見慣れた事物を〈非日常化・異化〉する方法が芸術の方法だとする画期的な視点から文学作品の構造や表現方法を緻密に分析し、文学の内的法則の確立をめざしたロシア・フォルマリズムの代表作。
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