著 者: 鈴木 賢一 |
ISBN:4-540-06245-X |
発行所: 農山漁村文化協会 |
発行日:2006年07月 |
1章 子どもとまちづくり—ワークショップの可能性— 参画のはしごを登る 秘密基地 よりの抜粋
- 子どもの建築教室を重ねるうちに、プログラムの組み立てに関して板ばさみの感覚をもつようになりました。建築教室の学習プログラムを精緻にすればするほど、大人が子どもに伝えたいことが全面に出てしまい、子どもの自由な発想を奪ってしまうからです。もともとは、子どもが活動を通じて知らず知らずのうちに気が付き学ぶプロセスを大事にしたかったのです。だからこそ、どうしてもやってみたいと思う企画がありました。それが秘密基地づくりです。
- (中略)
- 皆さんは秘密基地ということばから何を連想しますか? 研究室の学生が、今の子どもたちが秘密基地をもっているかを卒業研究で調べたことがあります。使い捨てのカメラで自分の秘密基地を写真に撮らせました。以前にはまちの中にあった得体の知れない場所が消え失せてしまって、そういう場所をもっていないのではないかという仮説に反して、多くの子どもたちが秘密基地を持っていました。写真と添えられたコメントを読むと、「秘密」とは「仲間で共有する」という意味に、「基地」とは「居場所」という意味に解釈できました。(P28)
こどもOS研究会が大人を対象に行った、2008年の第1回から第3回までの「プレイフル・デザイン・スタジオ」ワークショップでは、「こどもOSという発想自体が面白く、経験したことのない時間だった」といううれしい評価の反面、「やらされ感があった」、「はじめから“おとしドコロ”を設定してあるように感じた」というコメントもありました。ワークショップ参加者に「こどもOS」を感じてもらおうとする様々な仕掛けが、主催者側の誘導や強制に感じられたという意味で私たちの反省材料です。
2009年はこどもたちが生活している空間で「こどもOS」を調査するためのワークショップをいくつかの小学校とその周囲で行う予定です。その際に、同じ轍は踏まないということが肝要です。「こどもたちに自由にさせる」、「気づいてくれるまで待つ」という姿勢が大事ですね。
私たちの仮説は、現代のどんな地域のどんな状況に暮らすこどもたちであっても、「秘密基地」や「お気に入りの場所」、「不思議な場所」があって、そこでのこどもOSが垣間見えるというものです。こどもたちがどのような振舞いを見せてくれるのか?興味は尽きません。
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