京都造形芸術大学こども芸術学科で、保育や人間教育の新しい可能性を開く人材を育てている水野先生と、陶芸屋台カフェを引いて全国の路上・公園・空き地に出没し、「野点」でコミュニケーションアートをしかける芸術家、きむらとしろうじんじんさんとのアート対談でした。
メインの講座は午後からで、テーマは『学校にアーティストがやってくる!「アートでひらくこどもと社会」。』
保育士や子育て中の女性、ミュージアムの運営者、芸大の先生や学生・・・etc. 皆さん何らか子ども教育やアートに関わりのある、熱心な参加者が三十数名。
「アートで何を開くの?」「こどもと社会の関わりって?」「こどもって何、おとなって何」「アートは何をクリエイトするの?」といった、結構深くて簡単には答えの出そうにないことをテーマに、参加者も最近の話題や悩みを語りあって、最後にはアートの枠組みにまで行きついて・・・「それじゃあアートだって宣言することと、しないことにどういう意味があるの?」などと通常では重苦しくなってしまいそうな雰囲気なのですが、全然そうではなくて、講座は終始なごやかに和気あいあいと進行したのです。
その理由は、間違いなく会場に4人の子どもたちがいたからです。この子たちがホワイトボードを使って歓迎のおもてなしをしてくれたり、大人の話に時たま“ちゃちゃ”を入れてくれるのです。
参加者の自己紹介のときには、主催者の方が「別に本名を名乗らなくても、嘘の名前でもニックネームでもいいんですよ〜」と茶化すと、あるこどもが、お話のなかに登場してくる人物のような、まったくのデタラメ自己紹介を延々と即興でやってのけてしまって、全員が拍手喝采!
大人だ!子どもだ!と、大人は何でそんなつまらないことにこだわっているんだろうと言わんばかりに「おとなのようなこどもは、“おとも”」、「こどものようなおとなは、“こどな”」と絶妙のタイミングでアドリブを飛ばしてくれて会場は大爆笑!(しかし核心を突いていることは確かです)
そんなこんなで講座の主役は完全にこどもたちにさらわれてしまいました。
大人は望むと望まないにかかわらず、あらゆるところで枠に絡めとられてしまいます。アートでさえも純粋芸術(ピュア・アート)大衆芸術(ポピュラー・アート)限界芸術(マージナル・アート)ができてしまうように、部分的な偏った存在に押しやられて・・・。
しかし、こどもたちの思考は未分化な状態としての「全体性」で迫ってきますから、大人は勝負になりません。しかも話はかみ合っているのですから「こども」恐るべしですね!
実は午前中に行われた「おさんぽ会」の方が数倍楽しかったので続けて報告します。
「北白川小学校でおさんぽしよう!」
午前中の企画は、小学校のこどもたちと一緒に学校の周りをお散歩するという楽しいイベント。
土曜日でしたが三年生の女の子4人、男の子2人が集まってくれました。ファシリテーターはきむらとしろうじんじんさん。それに水野先生とスタッフに私を入れて参加者2人。保護者と担任の先生と校長先生?。全体でも15名程の人数でした。
じんじんさんが絶妙の語り口でこどもたちに話しかけます。
「おっちゃんなー、この小学校に来るのは初めてやから、みんなが知ってるお薦めのところ紹介してくれへんかー?」「楽しいとことか、ホッとするとことか、おもろいとことか、不思議なとことか、きれいなとことか・・・何でもえぇねん。」
最初は恥ずかしがって“もじもじ”していたこどもたちですが、一人が話し出すと堰を切ったように出てきます。
子「う〜ん?銀閣寺の裏道をずぅ〜っと行くと、おもろいおっさんとおばちゃんの家があって・・・そこ。」じ「知り合いなん?」
子「知らんけど。」じ「そら入ったらあかんやろ!」
子「お山の幼稚園!山の上で景色がすごいいいねん!」じ「お山の幼稚園て、ええ呼び方やなー。」
子「谷川!!!。チョロチョロ川と森があるねん、すごいきれいなところやでー。」じ「行ってみたいけど今日はちょっと無理ちゃうか?今度な!」
子「それやったら“ちんさち”もええわ。」じ「ちんさち???」子「沈砂地いうて、川がU字型になってて砂がいっぱい溜まってるねん。」「そこでお弁当食べるねん。」
子「家の裏の空地に、お茶碗のかけらが埋まってて、お地蔵さんの花入れの花の模様が付いてるねん」じ「おっちゃんそれ個人的にものすごい興味あるわ!」
子「ウサギ小屋。じめじめした木がたくさん生えてるエリアや。ここの階段の下から大の字を睨みつけると人生が見えてくるねん。」じ「えらい哲学的やな〜。」
子「うちの家の柿の木に登って大を見下ろすねん。」じ「○○ちゃんの家は『大』を見下ろせるところにあるんかいな?」子「ちゃうちゃう、大はうちの犬やねん。」
子「猫の隠れ家。」じ「猫がいっぱいいてるんかいな?」子「そうや。化け猫屋敷や!」
実はまだまだ面白い会話が続いていて載せきれません。そして、いつまでも会話を聞いていたいぐらいだったのですが、そろそろ探索に出かけなくてはなりませんでした。
そのときに撮らせてもらったのが下の写真です。「こどもOS=こども性」が、遺憾なく発揮されていると思いませんか?
お散歩会の終わりにじんじんさんが素直な感想を述べていました。「今度は一日かけてお散歩会やろう。なっ!みんなで沈砂地でお弁当食べて・・・。」私も同感です。
日だまりの図書館、ポカポカカーペットを布団代わりに | 階段の手すりには年期ものの「こどもOS」防止装置が | 滑り台は駆け上がって遊びます! |
階段の下の隠れ家(三角の明かり取り窓がアクセント) | 狭いところが大好き! | フェンスの破れ目は、格好のショートカットルート | 全員でお地蔵さんのポーズ! |
「ゴミュニティアート」「さようならART」ってのがいいね。
注:こどもたちのプライバシー保護のために、画像の一部にモザイク処理をしておりますので御理解ください。
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